2016年5月31日火曜日

アルコール・薬物依存のケース 

Neonatal Abstinence Syndrome(NAS)という症状に苦しむ赤ちゃんが珍しくないこちらの臨床現場。カナダでの臨床時代もわりと関わることがありました。

お母さんが薬物・アルコール依存で適切な治療がないまま妊娠・出産をすると赤ちゃんも大きな影響を受けます。妊娠中の胎盤を通じて薬物が赤ちゃんに伝わり、生後はいわゆる禁断症状のようなことが起きます。泣き方は普通でなく、泣くというよりもかなきり声で叫ぶという感じ。ミルクを飲んでも吐いたり、循環状態が悪かったり。重症な二日酔いがずっと続いているような?と想像するとわかりやすいでしょうか。。。

日本だと、薬物所持だけでもう罪になるようですが、こちらは所持だけではつかまったりはしないようです。実際街中でもあきらかに怪しげなものを吸引してハイ状態になっている人を見たり、地域によっては注射針が散乱しているところもあります。

私の職場にはWomen's Alcohold&Drug Service(通称WADS)という部署もあります。ここは名前の通り、アルコール・薬物依存の女性のケアをするところで、助産師・看護師・産婦人科・小児科、精神科医師、カウンセラー、ソーシャルワーカー(児童福祉関連)、薬剤師などなど、多職種が連携しています。日本では薬物依存が周産期の現場ではなじみがないと思いますが、アメリカ、カナダそしてここオーストラリアではかなり深刻な問題です。

吸引、静脈注射での薬物使用、それも近年はIceという新種のかなりたちの悪い薬物がはやり始め、このIceの影響をうけた赤ちゃんは症状が悪いことも多いです。

日々の仕事ででこういった赤ちゃんを受け持つことが珍しくない最近。。。そして本当にびっくりするような家族背景が多いです。

昨日受け持った生後1週間ほどの赤ちゃん(女児)のお母さんはアルコールも薬物もタバコも超大量に毎日摂取(妊娠中も)。逮捕歴もある。出産後は勝手に病院からいなくなる。赤ちゃんのお父さんは家庭内暴力で通報された経歴もあり、両親ともに赤ちゃんにリスクが大きすぎるので現在面会できない状態。

ちょっと前に受け持った赤ちゃんのママはまだ10代前半。薬物を8歳からはじめた。自分の親はいなく、里親で育った。赤ちゃんは先天性の淋病にもかかっていた。

別のケース。赤ちゃんの両親、そして母親がたのお祖母ちゃんもみんな薬物がらみで逮捕歴あり(密輸業)

と、NASの赤ちゃんの看護はその周りの家族との関わりもとても複雑になってきます。法的な仕組みも複雑で私はまだまだ勉強中。

違法薬物なのに使っている人は犯罪に当たらないのか?と先日WADSの精神科の先生に聞いたところ、薬物依存(処方薬物も含み)はある意味精神疾患で治療対象ということで関わることができるんだそうです。(だたこれも州によってガイドラインが違うそうです)

ちなみにアメリカの何処かの州では、薬物依存の妊婦やママたちを刑務所に送るという手段をとるところもあるそうです。

薬物使用のケースは年々増えており、今後もますますこちらの新生児看護では大きな課題にになっていくようです。。。


参考までにWADSのリンクを貼っておきます。
https://www.thewomens.org.au/health-professionals/maternity/womens-alcohol-and-drug-service/